「Closer」のMVを制作させて頂きました。

SUMIRE1222様「Closer」のMVを制作させて頂きました。

未発表分も含めると、MVで関わらせて頂いたのは今回で7作目となります。
今回は「Closer」の宣伝も兼ねまして、
MV制作に使ったソフトやBlenderのアドオンについて少し書きたいと思います。

Cascadeurの導入

Cascadeurをはじめて使ったMV

今作では、「Cascadeur」というモーション制作ソフトを使って人物アニメーションを制作しました。
テスト動画は過去に何度か作ってきたのですが、MVに導入したのは今回が初めてでした。

・Blender×Cascadeur×MarvelousDesignerのテスト

①BlenderでPencil+を使ってキャラクターアニメーションを作る
②Cascadeurでモーションを作る
③クロスシミュレーションをMarvelous Designer(以下MD)で作る

…というのがしばらく前に、自分で決めた動画制作の目標だったので
ひとまずゴールかな?と思っています。
とはいえ、技術的にはまだスタート地点なので、精進していきたいです。

Cascadeurを使う理由

Blenderのみでもキャラクターアニメーションは当然、制作可能です。
以前作らせて頂いた、「I LOVE YOUは世界の言葉」というMVでは
Blenderアドオンの中でも有名な
「AutoRigPro」と「AnimationLayers」でモーションを制作しました。

ですが、Cascadeurを使うと
・体の一部を動かすと、他の部位も重心などを考慮したバランスの取れたポーズにしてくれる
・作ったモーションに「現実ならこういう感じになるよね?」という動きを加えてくれる
・複数キャラが絡むモーションを快適な環境で作れる
・キャラクターの造形に関係なく、モーションをリターゲットできる
といったようなメリットがあります。

もちろん、
インポートやエクスポート、リグの設定などの面倒な部分や、
情報が少ない中での手探りの制作というデメリットもあるのですが
「自分で作ってる感がありつつ、良い感じに下駄をはかせてくれる」
という立ち位置が気に入っています。

そして、今回は特に「Animation Unbaking機能」が活躍してくれました。

Cascadeurの「Animation Unbaking」機能

例えば、モーションキャプチャーしたデータには1フレーム毎にキーフレームが打たれています。
この状態で後から動きを調整しようとすると、その前にキーフレームの整理が必要になります。

Cascadeurには「Animation Unbaking」という機能があり、
キーフレームを良い感じに自動で間引いて整理してくれます。

他にも例えば、モーション配布サイト「Mixamo」のモーションの中には
適用させるモデルの形状によっては、
一瞬カクつくなど若干動きに違和感が出てしまう場合があるのですが、
CascadeurでAnimation Unbakingさせてしまえば、それを除いた上で
アレンジして利用する…など気軽に行うことが出来ます。

また、以前自分が作ったモーションもこの機能を使う事で再利用しやすくなります。

シンプルなモーションにリアルな動作を加える

Cascadeurを使うと、
「そのモーション、現実ならこういう感じになるよね?」という提案をしてもらうことが出来ます。

以下の動画を見ると、
鉄棒にぶら下がって前後に回転するシンプルな動き(グレーの人)に
重力や反動といったリアルな動き(グリーンの人)が加わっているのが分かると思います。

最新バージョンでは、ついにキャラクター同士が互いに影響を受ける事も出来るようになりました。
この辺りの機能の更なる進化に期待しています。

今回使ったBlenderアドオンなど

今回もメインツールはBlenderを使いました。
定番を除いて、Closer制作前~制作中に導入したアドオンを紹介します。

■Launch Control
最低限、タイヤ4つと車体1つ、合計5つのオブジェクトがあれば
リアルに車を走らせることが出来るアドオン。

カーブで走行ルートを設定すればその通りに走ってくれますし、
地面の高低差やドリフトの動きなども計算して付けてくれます。
…「Closer」のMVでは、ただまっすぐ走らせただけでしたが(笑)

■Procedural Signs
ネオンや看板を簡単に作れるアドオン。
Eeveeでも使えますが、Cyclesの方がやはりリアルになりますね。

■たのしい都市ジェネレーター
日本人の「平の字」さんの作られた、中景~遠景向きの都市ジェネレーター。
個人的に最大の魅力は動作の軽さ。
都市ジェネレーターはいくつもありますが、他と比べるとスイスイ動き、レンダリングも速いです。
別商品の「たのしい建物ジェネレーター」で作った建物を配置することも出来ます。

■Simplicage
物理設定したオブジェクトに衝突する、「コリジョンオブジェクト」などを制作出来るアドオン。

他にもいろんな使い方が出来ますが、
今回はロングヘアの女性の髪の毛が、自身の身体を突き抜けないように設定するのに使っています。
ボディそのものにコリジョンを付けるのではなく、
モーションに合わせて動く、粗い膜のようなコリジョンを作る感じです。

■Camera Shakify
人がカメラを持って撮影した動画は、微妙に画面自体が揺れていたりします。
そんな動きを手動で付けるのは難しいですが、
このアドオンを使うと簡単につけることが出来ます。

■Perspective Plotter
3Dキャラやモデルを「静止画や動画の背景」に違和感なく配置出来るアドオン。
今回は固定カメラのシーンで活躍してくれました。
背景を3Dオブジェクトではなく、画像で済ませたい場合や
レンダリング済みの動画をバックに使って合わせる場合に重宝します。

■Cell Fluids
なんちゃって流体シミュレーションアドオン。
本来、流体シミュレーションは非常に計算に時間がかかりますが、
これは疑似的な流体を作るので、とても動作が軽いです。
止まっている物体や、アニメーションする物体もちゃんと存在を認識してくれます。
…とはいえ、今回は波のアニメーションのアップで少し使っただけでしたが。

■Lazy ShapeKeys
複数のシェイプキーを一括で打つのに使いました。
何気にデフォルトでは出来ないんですよね。
表情アニメーション全般で活躍してくれました。

■Robust Weight Transfer
ボディから衣装などにウェイトを転送し、貫通を抑えることが出来るアドオン。
私の場合は衣装はMDなので、今回は靴で使いました。
これを使っても貫通する時はしますが、その後の対処が楽になります。

まとめ

駆け足となりましたが、どなたかの参考になれば幸いです。

今回のMV、SUMIRE1222さんより
「ベッドシーンを出してほしい」と頼まれて
「さて、どうしよう…」となったのですが、何とか頑張りました(笑)
その辺りの苦悩も含めまして「Closer」、ぜひ最後までご視聴頂けますと嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。

余談

久々のブログ記事となりました。

以前はチュートリアルなど詳細に書いていたのですが、
最近はあまり細かく書けていません。
その理由の一つにChatAIの登場があります。

ブログのような無料公開記事も含め、インターネット上の多岐にわたる情報が収集され
ChatAIに質問した人に答える為のデータとして利用されます。

これまでもGoogleなどの検索結果のトップに
「概要」や「強調スニペット」として誰かの記事の一部が表示される…という事はあったわけですが、
その際は引用元も併記されていました。

しかし、ChatAIにそういった表記は無く、
AIに質問して答えて貰った人は、その情報の出所をAIに聞かなければ知ることはありません。
もちろん私も利用する側になることもあるわけですし、
これからはそれが当たり前になっていくのかな?とも思います。

しかし、そうなると自分のモチベーション維持がどうしても難しくなるので
今後はそういった
「自分の知識や経験、試行錯誤を経て得たニッチな情報」などは
pixivFANBOXなど、クローズドな場所で書いていこうと考えています。
現実的にどう…というよりは、自分のモチベの為ですね。

生成AIを使っていない画像素材や、Blenderのデータなども
配布していきたいなあと思っています。

準備が出来たらSNSなどでお伝えします。
もしよろしければお付き合いくださいませ。
何卒よろしくお願いいたします。

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