ここでは、
「依頼されて制作したイラストは誰のものになるのか?」という話をしたいと思います。
この記事の内容はStudioヤクモレオに限ったものではなく、
イラストレーターの世界で一般的なものとなります。
■依頼されて制作したイラストは誰のものですか?
依頼されて制作したイラストは
イラストを描いた人のものです。
イラストを依頼した人のものにはなりません。
依頼者が得られるのは、そのイラストそのものではなく、使うための「使用権」です。
■「使用権」とはなんですか?
例えば、雑誌内に使うカットイラストの制作を依頼した場合、
依頼者は「雑誌内にそのカットイラストを使用する権利を買った」
ということになります。
そのイラストを、「本の表紙」や「web素材」、「ラインスタンプ」などに併用することは出来ません。
なぜなら依頼者が買ったのは「雑誌内に使うカットイラストの使用権」だけだからです。
■「使用権」はいくらですか?
イラストの使用権は使われる媒体によって変わります。
同じイラストでも、
「雑誌のカットイラスト」では1万円なのが
「本の表紙」や「大きなポスター」だと10万円と大きく変わります。
加えて、使用可能期間を設ける場合もあります。
■「使用権」と「制作費」は別なのですか?
使用目的が一つの案件の場合、
見積もり額や請求書の金額には「使用権」と「制作費」を分けずに記載する場合もありますが、
「web素材」「ポスター」など複数媒体に使う場合、媒体ごとに「使用権」は発生します。
「制作費」はそのイラストの制作に必要な作業量や作業時間、画材などが価格に反映されます。
■なぜ依頼者のものにならないのですか?
「著作権」と「著作人格権」という法律があるからです。
「著作権」とは、イラスト、音楽、動画、漫画など、作品の制作者が持つ権利です。
この権利は作者のみに付与されます。
この法律により、著作者以外の人間が、著作物を勝手に公開・使用・販売・配布する事はできません。
作者は「著作権法」で、著作物の利益を守られています。
なので、契約時に決めた範囲内で使用する必要があるわけです。
■著作権の譲渡は可能ですか?
イラストレーター次第ですが、
著作権ごとイラストを売っている方もおられます。
が、「著作権」は譲渡できても、
「著作人格権」は著作権法第59条により譲渡不可能とされている為、売買出来ません。
■譲渡不可能な「著作人格権」とは何ですか?
作者が持つ、以下の権利です。
1、公表権(著作権法第18条)
著作者が未公表の著作物を公表するかどうか?や、
公表の時期、方法を決める権利。
2、氏名表示権(著作権法第19条)
著作者が著作物について、
著作者の名前を表示するかどうか?や、名前を表示する場合に実名を表示するかどうか?を決める権利。
3、同一性保持権(著作権法第20条)
著作物を無断で修正・変更・改変されない権利。
4、名誉声望を害する方法での利用を禁止する権利(著作権法第113条6項)
著作物が著作者の名誉を害するような方法で使用されることを禁止する権利。
「著作権」が依頼側に譲渡された場合でも、
この「著作人格権」を考慮して扱う必要があります。
■「著作権」の譲渡で依頼側にはどんなメリット・デメリットがありますか?
メリット
1、使用範囲や期間を気にする必要がなく自由に使うことが出来る。
2、複数媒体に使用出来る為、コストを削減できる。
デメリット
1、「著作権」を得ても、「著作人格権」について考慮して使用しなけばならない。
2、「著作権」の譲渡に高額な対価が発生する可能性がある。
3、結果的に使用権のみを購入した方が安価で済んだ…という可能性もある。
■「著作権」の譲渡で作者にはどんなメリット・デメリットがありますか?
メリット
「著作権」の譲渡により、高額な対価が得られる可能性がある。
デメリット
1、イラストが「どこで」「誰に」「どんな媒体」で使われたのかが把握しづらくなる。
2、著作人格権を無視された使われ方をされる可能性がある。
3、自分のイラストとして公表できなくなる。
(営業サンプルとして公開するにも譲渡相手に掲載許可を得なければならない)
4、第三者に著作権を転売されたり、フリー素材のように頒布されてしまう可能性がある。
依頼相手が企業の場合は、
担当者が移動や辞職で変わる場合もあります。
そうした場合、どのイラストが「著作権を得ているのか」という事を
引き継いだ担当者が把握していないと、困った事態になるかもしれません。
■まとめ
「著作権」の譲渡をする、しないは作者次第ですが
依頼側とよく話し合って決める必要があります。
依頼者様からしますと、
使用用途が限定されているのであれば、
著作権ごと得るより、使用権のみを得る方が格段にコストを抑えられます。
イラストレーターの方は、
クライアント様と契約を結び、契約書を作成する場合、契約書に
「著作権の譲渡」
「著作人格権の不行使」
が盛り込まれている場合もありますので注意してください。
様々な意図があるので、表記がある=危ないというわけではありませんが、
よく読み、確かめて双方納得できる形で契約書を作りましょう。
どなたかの参考になりましたら幸いです。
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