Cinema4Dで反転サーフェイス法を使ってみる。
久々にCinema4D(以下C4D)の記事です。
C4Dで「線画を表示する」というと、
sketch and toonがまず思い浮かびますが、他にも方法があります。
今回はその方法の一つ、
「反転サーフェイス法」によって描画される線を
sketch&toonと比較し、メリットとデメリットについて書きたいと思います。
□最初に
「反転サーフェイス法」ですが、
私はC4Dの書籍などでおなじみのコンノヒロム様(@hirotsu162)の
ツイートで存在を知りました。ありがたい!!
この記事はそのツイートを拝見し、実際に試して比較してみた!という内容になります。
□使い方
線画を出したいオブジェクトの「インスタンス」を作り、
「変位デフォーマ」を適用して膨らませる。…という方法です。
ザックリ説明すると上記のようなプロジェクトを作れば機能します。
※Redshiftの場合は、「貼る面」(表だけ&裏だけ)の設定は
ShaderGraphで「RS Ray Switch」ノードを使って行う必要があります。
法線の向きがバラバラなオブジェクトだと混乱するので、
最初はポリゴン化した(編集可能にした)立方体などで
試した方が分かりやすいと思います。
□詳細な使い方
詳細な使い方についてはコンノヒロム様のツイートをご覧いただくか、
書籍「Cinema4D 目的別ガイドブック Part1」をご確認ください。
上記画像をクリックしていただくと、詳細な解説ツイートにアクセスできます。
(コンノ様のツイートでは詳細な説明が連なって投稿されています)
書籍は現在ほぼ完売状態ですが、
電子版はMSA契約を結んでいたC4Dユーザーには無償公開してくれていたので
DLされているユーザーも多いのではないでしょうか。
2014年12月に発売された書籍なので
その後に搭載された新しい機能の解説はありませんが、現在でも活躍してくれる良書です。
□sketch&toonとの比較動画
それでは比較動画をご覧ください。
本来、sketch&toonは様々な線の表現が可能なのですが、
今回はアニメなどでおなじみの「一定幅の線」での比較となります。
□反転サーフェイス法のメリットとデメリット
■メリット
1、レンダリング時間が速い。
上記映像内の「ブドウが1回転する90フレーム(3秒)の動画」で比較したところ、
動画のレンダリング時間は
反転サーフェイス法…35秒
sketch&toon…1分21秒
と、半分以下でした。
2、ビューポートでリアルタイムに線画を確認できる
ビューポートの様子はこの通り。
リアルタイムでビューポートで線画の具合を確認できるのは大きいです。
Sketch&Toonの場合、
線の太さを確かめるだけでもレンダリングしないと分からないのが悩みの一つでした。
3、線画のパカツキやチラつきがほぼない。
sketch&toonではなかなか避けられない、
線のパカツキやチラつきが抑えられます。(詳しくは動画をご覧ください)
動画ではブドウが回転し、
粒が奥から手前に回ってきて、また奥に回っていくのですが
その過程で「sketch&toon」は線が不規則に途切れているのに対して
反転サーフェイス法では時間とともに線の幅が変わっています。
線の幅が徐々に太くなり、また細くなって消えていくので
自然に強弱がつき、滑らかに見えるわけですね。
4、Redshiftでも線画が描画出来る。
Redshiftなどの外部レンダラーでは「Sketch&Toon」は使えません。
しかし別のやり方として、例えばRedshiftで線画を描画したい場合は
「フレネル(RS Frenel)ノード」と「RS Rampノード」をつないで描画する方法があります。
スマートな手順で綺麗な線画が出せるのですが、
オブジェクトの形によってはアウトラインの線画を描写するのが難しいです。
※以下は反転サーフェイス法ではなく、Redshiftでフレネルノードを用いた動画。
右のブドウは綺麗にアウトラインが描画されていますが、
左の多面体は線画とは呼びづらい見え方になっています。
SDSの子にすればアウトラインが出ますが、多面体の形も丸まってしまいます。
フレネルはフレネルで使い道は勿論あるのですが
アウトラインを求める場合、反転サーフェイス法も覚えておいて損はないと思います。
・Cinema4D R21などの旧バージョンでも使える。
Cinema4D R23からは「シーンノード」を用いた描線手法が使えるようになりました。
が、R21などの旧バージョンを使い続けているユーザーは使うことが出来ません。
その点、「反転サーフェイス法」は問題なく利用出来ます。
■デメリット
sketch&toonと比べた場合のデメリットです。
1、表示できない線がある。
2、線種は一つしかない。
3、エッジ選択を用いての線の表示、非表示の調整ができない。
(ポリゴン選択での線の表示、非表示は可能)
4、ポリゴンの法線が裏返っている部分は描画出来ない。
(法線の向きを直せばOK)
5、プリミティブオブジェクトでも線は出せるが、
「編集可能でポリゴン選択範囲を付けたオブジェクト」でなければ扱いにくく、
プロジェクトによっては下準備に手間がかかる。
□具体例
3840×2160の4Kサイズでレンダリングした学校のシーンで比較。
・反転サーフェイス法
静止画は1枚2~4秒でレンダリングが終わりました。
動画は90フレームを3分40秒で書き出せました。
Sketch&Toonに比べれば線が出ていない部分もありますが、とにかく速いです。
「校舎」や「金網」、「門」などそれぞれのオブジェクトにつけるマテリアルには
「選択範囲タグ」を作って「選択範囲に限定」の設定をする必要があるので、
下準備に5分ほどかかりました。
・Sketch&Toon
静止画は1枚約113秒でレンダリングが終わりました。
動画は90フレームなので、おそらく170分=3時間弱ぐらいかかるのではないかと予測します。
時間はかかるものの、細部まで線が綺麗に描画されていて美しいですね。
こだわり始めるとキリがありませんが、
オブジェクトに「sketchタグ」を付ければとりあえず綺麗な線画が描画出来る!という点では
セッティングが楽です。
□併用や組み合わせ(2021年11月17日追記)
反転サーフェイス法とsketch&toonは併用したり、組み合わせて使うことも出来ます。
sketch&toonの線画は拡張性が大きく、魅力的な演出が出来ますが
動画ではどうしてもパカパカと点滅してしまうのが難点です。
反転サーフェイス法とsketch&toonを併用したり
AfterEffectsのプラグインである、
「NeatVideo」や「Looks」で加工したりすると、
完璧ではありませんが、ある程度目立たなくすることが出来ます。
また、反転サーフェイス法で線が出せない部分はsketch&toonで補う…という使い方も出来ます。
□まとめ
「反転サーフェイス法」は
sketch&toonの不得手な部分を補うことが出来る、実用的な手法と言えそうです。
1、レンダリングが圧倒的に速い。
2、アニメーションでパカツキやチラつきが発生しにくい。
3、ビューポートでリアルタイムに線画を確認しながら制作できる。
4、Redshiftなどの外部レンダラーでも使える。
5、Cinema4D R21などの旧バージョンでも使える。
この辺りに魅力を感じた方は、試してみる価値があると思います。
私も「キャラクターアニメーション」や、
これまで費用対効果で諦めていた「線画のある背景」など
今後、活用していきたいと考えています。
どなたかの参考になれば幸いです。
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