実写映像をイラスト風アニメーションに加工してみる。
久々に画像、映像の加工についてのお話です。
イラスト風の加工はSNSでも時々話題に上がりますね。
私も「写真をイラスト風に加工する」…というサービスを
以前からやっております。
→こちら
今回、もう少しハードルを上げた事に挑戦してみよう!と思い
「静止画ではなく実写映像をイラスト風にしてみるチャレンジ」
を行いました。
結果、出来た動画がこちらです。
※プラグインは使わず、AfterEffectsの標準エフェクトのみで加工しております。
改善すべき点は自分でも見つけているのですが、ひとまず納得出来るものにはなりました。
■イラスト風加工のやり方
最初にお断りしておきますと、
この解説は「誰でも1クリックで簡単にできちゃう!」といったものではございません。
理由は後述しておりますが、
ご自身で試行錯誤出来る方向けの内容です。
■イラスト風加工における「失敗」と「成功」
まず、
私のとっての「成功」と「失敗」を具体的にしておきたいと思います。
私のとってのイラスト風加工とは
アニメタッチのキャラクターのバックに配置して違和感の少ないものです。
また、元素材についている影の形を変えることは出来ないので
現実的に正しいかどうかなどはあまりこだわっておりません。
なので、
この時点で「自分の求めているものと違う」と思った方は
ブラウザバックして下さい。
■使用ソフトについて
映像を扱う場合は動画編集ソフトでないと困りますが、
加工の手法としてはどれも似たようなものです。
この記事はAfterEffectsを使う事をメインとしていますが、
PhotoShopやClipStudioPaint(クリスタ)で静止画を加工したい方の参考になるようにも書いております。
■元素材によるイラスト風加工の難易度
元素材によってイラスト風加工の難易度は大きく変わります。
室内…難しい
青空の見えない外…普通
青空の見える外…簡単
です。
元素材は
「昼に撮ったもの」で、「ある程度色の差が分かるもの」「解像度が足りているもの」
が望ましいです。
全体的に暗く影になってしまっていたり、
白飛んでしまっていたりする素材からは難しいと思ってください。
最近はHDR(ハイダイナミックレンジ 合成)が流行っておりますが、
ある程度彩度の高い素材からですと、加工もしやすいと思います。
(HDR自体がすでに加工だ!と言われればそれもそうなのですが)
元素材に「必要な色情報が含まれていること」が大事なのですね。
過去にご依頼いた、
ソーシャルゲームの背景制作では、
「夕方の街」や「夜の街」、「室内」なども制作いたしましたが、
これらはすべて昼の画像を作ってから加工しました。
昼の画像を作っておけば、
そこから夕方や夜を作る事は出来るのですが、逆は難しいのです。
夕方の撮影素材から作れるのは夕方のみ
夜の撮影素材から作れるのは夜のみ。
なので、加工で時間帯を変えたい場合は
昼に撮影した素材から作った方が良い…という事になります。
とはいえ前述の通り、「素材についた影の形」は変えられないのでそこは割り切る必要があります。
■キーイングの難しさ
キーイングとは簡単に言うと「不要な部分を色を指定して抜き取る作業」のことです。
AfterEffectsでは様々なキーイング用エフェクトがあります。
緑一色の「グリーンバック」であれば、キーイングエフェクトやロトブラシ機能で綺麗に抜けるのですが、
様々な色彩の含まれた空などを抜きたい場合、難易度が上がります。
下は電線や木の後ろに青空が広がっている画像です。
これが昼なら、青空を簡単に取り払うことはそんなに難しくありません。
しかし、これが夜となると
「どこまでが空で、どこまでが木や電線なのか判別が付きづらい」為に難しくなります。
キーイングやトリミングがうまく出来ないと、
明るい空では目立たなくとも、暗い空を配置した際にゴミや境界部分が目立ってしまいます。
そういう意味でも天気の良い、お昼の撮影素材から加工したほうが良いと思います。
■実写とイラストの違いって何?
思想や個性などのアート面の話ではなく、
実写をイラストっぽくする…とはどういうことなのか?
という意味です。
この画像はAが写真、Bがイラスト風に加工したものです。
Aに対してBは
・彩度が高い
・コントラストが高い
・線画がある(目立たせるかどうかは好み)
・若干青みがかっている
・色の階調が減っている
・色の境界部分が水彩画の様に溶けている
という差があります。
また好みにもよりますが
少しブラー(ぼかし)が入っている方が用途に合うケースもあるので
・ブラーがかかっている も入れておきます。
■「青みがかってる」ってどういうこと?
根拠は何もないのですが、
私は「青みがかっている」と若干イラストっぽく見える気がするのでそう調整しています。
上記画像は分かりやすく強調したものですが、Aは「赤み」Bは「青み」がかっています。
好みの問題と言われればそれまでですし、説明しようとすると難しいのですが…。
Aは単体で見る分には良くとも、人物が重なると背景が主張しすぎるような気がするのです。
創作では
「白いオブジェクトにつける影は薄い青色」
であることが多い為、キャラクターを重ねた際に違和感が抑えられるせいかしら?
と私は勝手に思っています…苦しい(汗)
また、下記写真は近所の自転車置き場の白い塗装部分ですが
天気の良い日の影の部分は青く見えます。
空の色が反射しているのもあるわけですね。
ここまでの情報から、
端的に言えば「記号化」され、強調されていると言えそうです。
そして、その「記号」としての一番の決め手は
「空」です。
■「空」の重要性
冒頭で
「空の見える外」は作りやすいと書きました。
空の在り方だけで
「これは写真加工だ」
「これは絵だ」
というの認識がパッと変わります。
試してみましょう。
AとBは同じイラスト風加工ですが、
空だけが違います。
いかがでしょう?
Bは一気にイラストっぽく見えませんか?
以前、
「風景写真がイラストになる」と話題になったスマホアプリがありましたが、
それは写真の「空」の部分を著作権を無視して、
空のイラスト(主に新海誠さんの画集などの画像)に
自動的に差し替えてしまうものでした。
そのアプリはすぐに問題となりましたが、考え方としては同じです。
イラスト風加工の流れは
・昼の撮影素材をイラスト風に色調補正
・線画を抽出して重ねる
・空を抜く
・別途制作した空(または自作イラストの空)を配置する。
・馴染ませる
です。
空も同様に、元素材を加工するのでも良いのですが
キーイングで抜いておけば
例えば後で時間帯を
・夕方に変えたい→夕日の空に変える
・夜に変えたい→夜空に変える
など、対応しやすくなります。
昼の画像を夕方や夜に加工する方法については
→こちら
で解説しております。加工に使う素材も配布しているので、試してみてください。
※静止画用の解説ですが、映像の場合でもある程度参考になると思います。
■まとめ
情報をまとめます。
私が行っているイラスト風加工の特徴は
・彩度が高い
・コントラストが高い
・線画がある
・若干青みがかっている
・色の階調が減っている
・色の境界部分が水彩画の様に溶けている
・ブラーがかかっている
大事な点
・空を抜く
・別途制作した空(または自作イラストの空)を配置する。
・馴染ませる
です。
これをソフトウェアで行う場合に必要な作業は
・彩度を高く→「色相・彩度・明度」などで調整する
・コントラストを高く→「明るさ・コントラスト」で調整する
・線画をつける→「ライン抽出(クリスタ)」や「カートゥーン」で抽出して重ねる
・若干青みがからせる→「カラーバランス」で調整する、画像やエフェクトで青のグラデーションをつくり、全体に乗算やオーバーレイで重ねる
・色の階調が減らす→「階調化(クリスタ)」「カートゥーン」などで調整する
・色の境界部分を溶かす→「ミディアン」などで調整する
・ブラーをかける→「ぼかし(クリスタ)」「ブラー」「グロー」などで調整する
・空を抜く→「色域選択(クリスタ)で消去」「マスク」「キーイング」などで抜く
・別途制作した空(または自作イラストの空)を配置する→今回使ったものです。適当ですがよろしければどうぞ(右クリックで保存してください)
(※上記「空のカット」以外の動画や記事内データの二次利用はご遠慮ください)
・馴染ませる→例…ブラーをかける。グラデーションや単色で塗りつぶしたレイヤーをソフトライトの不透明度10%にして重ねる。
となります。
また、加工の工程で副作用的に必要な色が抜けてしまう場合があります。
例…コントラストを上げたら薄い部分が飛んだ、空をキーイングで抜いたら屋根や海の青色もなくなったetc…
そういう場合には、失った色を補う為のレイヤーを「色範囲」エフェクトなどで用意して重ねてあげると良いです。
※エフェクトの選択、適用順、値は元画像によって大きく変わるので明記できません。
「AfterEffectsはPhotoshopの動画版」…とも言われているので、静止画の加工技術も参考になると思います。
■完成までの流れ
加工が完了するまでの簡単な流れを動画にしました。
どなたかの参考になりましたら幸いです。
■次回はプラグインのお話
実写映像をイラスト風アニメーションに加工するにあたって、
「これはあった方が良いかも」
…と、個人的に思ったプラグインが今回ありました。
なので、次回はそのプラグインについて語りたいと思います。
■宣伝
最後に宣伝させてください。
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