実写映像をイラスト風アニメーションに加工してみる。

久々に画像、映像の加工についてのお話です。
イラスト風の加工はSNSでも時々話題に上がりますね。

私も「写真をイラスト風に加工する」…というサービスを
以前からやっております。
→こちら

今回、もう少しハードルを上げた事に挑戦してみよう!と思い
「静止画ではなく実写映像をイラスト風にしてみるチャレンジ」
を行いました。

結果、出来た動画がこちらです。

※プラグインは使わず、AfterEffectsの標準エフェクトのみで加工しております。
改善すべき点は自分でも見つけているのですが、ひとまず納得出来るものにはなりました。

イラスト風加工のやり方

最初にお断りしておきますと、
この解説は「誰でも1クリックで簡単にできちゃう!」といったものではございません。

理由は後述しておりますが、
ご自身で試行錯誤出来る方向けの内容です。

イラスト風加工における「失敗」と「成功」

まず、
私のとっての「成功」「失敗」を具体的にしておきたいと思います。

私のとってのイラスト風加工とは
アニメタッチのキャラクターのバックに配置して違和感の少ないものです。

また、元素材についている影の形を変えることは出来ないので
現実的に正しいかどうかなどはあまりこだわっておりません。

なので、
この時点で「自分の求めているものと違う」と思った方は
ブラウザバックして下さい。

使用ソフトについて

映像を扱う場合は動画編集ソフトでないと困りますが、
加工の手法としてはどれも似たようなものです。
この記事はAfterEffectsを使う事をメインとしていますが、
PhotoShopClipStudioPaint(クリスタ)で静止画を加工したい方の参考になるようにも書いております。

元素材によるイラスト風加工の難易度

元素材によってイラスト風加工の難易度は大きく変わります。

室内…難しい
青空の見えない外…普通
青空の見える外…簡単

です。

元素材は
「昼に撮ったもの」で、「ある程度色の差が分かるもの」「解像度が足りているもの」
が望ましいです。

全体的に暗く影になってしまっていたり、
白飛んでしまっていたりする素材からは難しいと思ってください。

最近はHDR(ハイダイナミックレンジ 合成)が流行っておりますが、
ある程度彩度の高い素材からですと、加工もしやすいと思います。
(HDR自体がすでに加工だ!と言われればそれもそうなのですが)

元素材に「必要な色情報が含まれていること」が大事なのですね。

過去にご依頼いた、
ソーシャルゲームの背景制作では、
「夕方の街」「夜の街」「室内」なども制作いたしましたが、
これらはすべて昼の画像を作ってから加工しました。

昼の画像を作っておけば、
そこから夕方や夜を作る事は出来るのですが、逆は難しいのです。

夕方の撮影素材から作れるのは夕方のみ
夜の撮影素材から作れるのは夜のみ。

なので、加工で時間帯を変えたい場合は
昼に撮影した素材から作った方が良い…という事になります。

とはいえ前述の通り、「素材についた影の形」は変えられないのでそこは割り切る必要があります。

キーイングの難しさ

キーイングとは簡単に言うと「不要な部分を色を指定して抜き取る作業」のことです。

AfterEffectsでは様々なキーイング用エフェクトがあります。
緑一色の「グリーンバック」であれば、キーイングエフェクトやロトブラシ機能で綺麗に抜けるのですが、
様々な色彩の含まれた空などを抜きたい場合、難易度が上がります。

下は電線や木の後ろに青空が広がっている画像です。

これがなら、青空を簡単に取り払うことはそんなに難しくありません。
しかし、これがとなると
「どこまでが空で、どこまでが木や電線なのか判別が付きづらい」為に難しくなります。

キーイングやトリミングがうまく出来ないと、
明るい空では目立たなくとも、暗い空を配置した際にゴミや境界部分が目立ってしまいます。

そういう意味でも天気の良い、お昼の撮影素材から加工したほうが良いと思います。

実写とイラストの違いって何?

思想や個性などのアート面の話ではなく、
実写をイラストっぽくする…とはどういうことなのか?
という意味です。

この画像はAが写真Bがイラスト風に加工したものです。

Aに対してBは
・彩度が高い
・コントラストが高い
・線画がある(目立たせるかどうかは好み)
・若干青みがかっている
・色の階調が減っている
・色の境界部分が水彩画の様に溶けている

という差があります。

また好みにもよりますが
少しブラー(ぼかし)が入っている方が用途に合うケースもあるので

・ブラーがかかっている も入れておきます。

青みがかってる」ってどういうこと?

根拠は何もないのですが、
私は「青みがかっている」と若干イラストっぽく見える気がするのでそう調整しています。

上記画像は分かりやすく強調したものですが、Aは「赤み」Bは「青み」がかっています
好みの問題と言われればそれまでですし、説明しようとすると難しいのですが…。
Aは単体で見る分には良くとも、人物が重なると背景が主張しすぎるような気がするのです。

創作では
「白いオブジェクトにつける影は薄い青色」
であることが多い為、キャラクターを重ねた際に違和感が抑えられるせいかしら?
と私は勝手に思っています…苦しい(汗)

また、下記写真は近所の自転車置き場の白い塗装部分ですが
天気の良い日の影の部分は青く見えます
空の色が反射しているのもあるわけですね。

ここまでの情報から、
端的に言えば「記号化」され、強調されていると言えそうです。
そして、その「記号」としての一番の決め手
「空」です。

「空」の重要性

冒頭で
「空の見える外」は作りやすいと書きました。

空の在り方だけで

「これは写真加工だ」
「これは絵だ」
というの認識がパッと変わります。
試してみましょう。

AとBは同じイラスト風加工ですが、
空だけが違います。

いかがでしょう?
Bは一気にイラストっぽく見えませんか?

以前、
「風景写真がイラストになる」と話題になったスマホアプリがありましたが、
それは写真の「空」の部分を著作権を無視して、
空のイラスト(主に新海誠さんの画集などの画像)に
自動的に差し替えてしまうものでした。

そのアプリはすぐに問題となりましたが、考え方としては同じです。

イラスト風加工の流れは

・昼の撮影素材をイラスト風に色調補正
・線画を抽出して重ねる
・空を抜く
・別途制作した空(または自作イラストの空)を配置する。
・馴染ませる

です。
空も同様に、元素材を加工するのでも良いのですが
キーイングで抜いておけば

例えば後で時間帯を
・夕方に変えたい→夕日の空に変える
・夜に変えたい→夜空に変える

など、対応しやすくなります。

昼の画像を夕方や夜に加工する方法については
→こちら
で解説しております。加工に使う素材も配布しているので、試してみてください。
※静止画用の解説ですが、映像の場合でもある程度参考になると思います。

まとめ

情報をまとめます。

私が行っているイラスト風加工の特徴は

・彩度が高い
・コントラストが高い
・線画がある
・若干青みがかっている
・色の階調が減っている
・色の境界部分が水彩画の様に溶けている
・ブラーがかかっている

大事な点
・空を抜く
・別途制作した空(または自作イラストの空)を配置する。
・馴染ませる

です。

これをソフトウェアで行う場合に必要な作業は

・彩度を高く→「色相・彩度・明度」などで調整する
・コントラストを高く→「明るさ・コントラスト」で調整する
・線画をつける→「ライン抽出(クリスタ)」や「カートゥーン」で抽出して重ねる
・若干青みがからせる→「カラーバランス」で調整する、画像やエフェクトで青のグラデーションをつくり、全体に乗算やオーバーレイで重ねる
・色の階調が減らす→「階調化(クリスタ)」「カートゥーン」などで調整する
・色の境界部分を溶かす→「ミディアン」などで調整する
・ブラーをかける→「ぼかし(クリスタ)」「ブラー」「グロー」などで調整する
・空を抜く→「色域選択(クリスタ)で消去」「マスク」「キーイング」などで抜く
・別途制作した空(または自作イラストの空)を配置する→今回使ったものです。適当ですがよろしければどうぞ(右クリックで保存してください)

(※上記「空のカット」以外の動画や記事内データの二次利用はご遠慮ください)
・馴染ませる→例…ブラーをかける。グラデーションや単色で塗りつぶしたレイヤーをソフトライトの不透明度10%にして重ねる。

となります。

また、加工の工程で副作用的に必要な色が抜けてしまう場合があります。
例…コントラストを上げたら薄い部分が飛んだ、空をキーイングで抜いたら屋根や海の青色もなくなったetc…
そういう場合には、失った色を補う為のレイヤーを「色範囲」エフェクトなどで用意して重ねてあげると良いです。

※エフェクトの選択、適用順、値は元画像によって大きく変わるので明記できません。

「AfterEffectsはPhotoshopの動画版」…とも言われているので、静止画の加工技術も参考になると思います。

完成までの流れ

加工が完了するまでの簡単な流れを動画にしました。

どなたかの参考になりましたら幸いです。

次回はプラグインのお話

実写映像をイラスト風アニメーションに加工するにあたって、
「これはあった方が良いかも」
…と、個人的に思ったプラグインが今回ありました。

なので、次回はそのプラグインについて語りたいと思います。

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