Cinema4Dの外部レンダラーを比較してみる。

今回は、
Cinema4Dに対応する外部レンダラーについて書きたいと思います。

これまで私はCinema4Dの標準レンダラーしか使ってきませんでした。
なぜなら、Cinema4Dの主な使用目的が漫画やイラストの制作補助であり、
「sketch&toon」という機能ありきだったからです。

外部レンダラーはその機能が使えないので、あまり興味が無かったのですね。
(※「sketch&toon」って何?と言う方は→こちらをご参照ください)

外部レンダラーを勉強中の人間による比較記事

と言う事で、私は外部レンダラーについてはまだまだ勉強中です。

そんな人が比較記事なんか書かないでよ!…と言われてしまいそうですが、
使い始めるにはどれかを選ばなければなりませんし、
金銭的にも学習コスト的にも安くないので、すぐに一つに絞るのは難しいところです。

私が導入に向けて調べたり比較した事が、同じように導入を検討している方のお手伝いとなれば幸いです。
大抵のレンダラーはデモ版を試せるようになっているので、気になる方はDLしてみると良いでしょう。

第一線で活躍するプロの意見

もちろん、
「聞きたいのは第一線のプロの意見なんだよ~!」
という方もおられると思います。そんな方はこの動画をどうぞ。

私の尊敬するCGクリエイターの横原大和様
「Redshift」「Octane」について、日本語で解説してくれている貴重な動画です。(24分ぐらいから)

この動画を見ればもう私の解説なんて不要かもしれませんが、
このブログ記事ではなるべく専門用語を使わずに、一般的なスペックのパソコン環境でのお話をしているので、
「これから外部レンダラーを使ってみようかな?」という初心者にも分かりやすい内容になっていると思います。

それでは、勉強中ゆえ間違いもあるかもしれませんが(そこは気づき次第修正していきます)
解説記事スタートです!

外部レンダラーって何?

3DCGソフト本体には付属していないレンダラーの事です。
いくつもありますが
今回は「Octane」「Redshift」「Cycles4D」を比較します。

「Cycles4D」はCPUでも動きますが、「Octane」「Redshift」を使うにはGPUが必要です。
私は現在GTX 1080Tiを一つ載せたWindowsマシンを使っています。

上記の画像は同じ位置、角度で同じHDRI素材を用い、R21のノイズ除去を使ってレンダリングしたものです。
マテリアルは各レンダラー用に変換したもの(後述)を使っています。
※Redshiftはデモ版なので透かしが入っています。

この画像を見るだけでも、レンダラーによってだいぶ印象は変わるのが分かりますね。

外部レンダラーを使うとどんなメリットがあるの?

いろんな特徴を持ったレンダラーがあるので一概には言えませんが…

・レンダリングが速くなる。(GPUで計算でき、更に搭載したGPUの数に比例して速くなる)
・フォトリアルな絵が作りやすくなる。(現実的な光の計算が得意)
・リアルタイムでレンダリング結果を確認する事が出来る。(リアルタイムプレビュー)

でしょうか。
ピンとこない人の為に、まずこの画像をご覧下さい。

これはCinema4Dで、あるマテリアルを適用させたオブジェクトのプレビュー画面です。
これをレンダリングすると、こうなります。

「え?何でデコボコになったの?」…と思うかもしれません。

これは標準マテリアルで「変位」という機能を使っているからなのですが、
レンダリングしてはじめてその効果を確認出来ます。

つまり、レンダリングが終わるまで待たないと具体的な形が分からないのですね。
CG制作は多くの時間をプレビュー画面を見て進めますが、
レンダリング結果とプレビューの状態は同じではないのです。

化粧をしようと思って鏡を覗いたら
5秒待たないと鏡に顔が映らない…となると、とてもやり辛いでしょう。

やはり、最終結果に近いものをリアルタイムで確認しながら制作したいものです。
で、外部レンダラーにはその機能が備わっているわけですね。
それだけでも大きなメリットがあると言えそうです。

(※Cinema4D同梱の「ProRender」にはリアルタイムプレビュー機能があります。試してみて下さい)

各レンダラーのメリットとデメリット

さて、ここでは「Octane」「Redshift」「Cycles4D」メリットとデメリットについて所感を語ってみます。

Octane Render

メリット

・C4D利用者にユーザーが多く、日本語の情報を得やすい。
・無調整でも雰囲気のある絵を出してくれる。
・被写界深度を簡単に付けられるので、ボケを効かせた絵もサラリと作れる。
・月20ドルから使えるサブスクリプションがある。
・物理シミュレーション時のプレビューでも遅延が出にくい。
・サブスクリプション版で使える「LiveDB」には使い勝手の良いマテリアルが最初から多く入っており、
別途マテリアルを買い揃えなくても困らなそう。
・シンプルな表現であればノードを触らなくても使える。
・Toonの表現が出来る。

デメリット

・Redshiftに比べると標準マテリアルがそのまま表示出来ないものがある。(後述)
・複雑なシーンだとレンダリングが止まったり、始まらない事がある。
・Toon表現が「sketch&toon」よりも弱く、レンダリングも速くないので使い道が難しい印象。(後述)
・x-particlesの一部機能はキャッシュ(OpenVDB)を作ってからでないと反映されない。
(x-particlesって何?と言う方は→こちら
・複数のホストアプリで利用したい場合は別途契約が必要。

■入手先…https://home.otoy.com/render/octane-render/
■価格……買い切り版619ドル、サブスクリプション版月20ドル(GPU2つまでの制限有)

Redshift

メリット

・とにかくレンダリングが速い。
・安定して動作する。
・マテリアルの互換性が高く、標準レンダラー用マテリアルも結構普通に表示してくれる。(後述)
・被写界深度を簡単に付けられるので、ボケを効かせた絵もサラリと作れる。
・シンプルな表現ならば、ノードを弄らなくてもなんとかなる。
・複数のレンダラーにマルチ対応したプラグインなどでRed shift版が優遇されている(ように感じる)。
・C4Dの開発元であるMaxonが買収したので、将来性が抜群。
・C4Dのノイズ機能をマテリアルで利用できる。
・ライセンス一つで様々なホストアプリに利用可能。

デメリット

・導入コストが多少かかる。
・日本語のチュートリアル情報が現状少ない。
・写実的な絵が得意なので、求めている絵の方向性が違う場合には調整が必要。
・物理シミュレーション時にプレビュー画面で遅延が発生する。
(リアルタイムプレビューを止めると遅延はなくなる)
・現状Toon表現は出来ない。
・x-particlesの一部機能はキャッシュ(OpenVDB)を作ってからでないと反映されない。

■入手先(海外本家)…https://www.redshift3d.com/
■入手先(国内代理店)…https://www.borndigital.co.jp/software/4444.html
■価格……購入時に500ドル、1年後からのメンテナンス費用で年に250ドル

Cycles4D

メリット

・x-particlesの開発元が提供しているレンダラーなので、
x-particlesで「xpExplosia」(炎や煙など)がキャッシュを作らずに表示出来る。(後述)
・比較的安価。
・Blenderの標準レンダラーの「Cycles」をC4Dで利用できるようにしたものなので、
Blenderの情報が役に立つ。

デメリット

・ノードの操作を求められるので、ノードに慣れていないと少々敷居が高い。
・RedshiftやOctaneだと、そのまま表示出来ていたマテリアルも表示出来ない事が多い。
・公式のマテリアルセット「Starter Pack」は別売。
・x-particles向けの日本語情報を得ようとすると難しい。

■入手先…https://insydium.ltd/products/cycles-4d/
■価格……283.50ドル、1年後からのメンテナンス費用年121.50ドル

※個人的には、x-particlesに本気で取り組む人向けのレンダラーという感じ。

マテリアルの互換について

各レンダラーはそれぞれそのレンダラー専用のマテリアルを使うのが基本です。
が、Cinema4Dの標準マテリアルが読める場合もあります。

試しに、樹木と建物のオブジェクトを配置して
マテリアルは弄らずに各レンダラーでレンダリングしてみたものがこの画像です。
※バックはHDRIで同じものを表示しています。

「Redshift」は忠実にレンダリングできていますが、
「Octane」は樹木の葉の部分でアルファの抜けが上手くいっていないようです。
「Cycles4D」に関してはマテリアルが読み込めず、ほとんどピンク色で塗りつぶされてしまっています。

もちろん、これは知識の問題なので解決方法を知っていれば簡単に直せます。
たとえば、「Octane」でおかしくなっている樹木の葉は
白黒のアルファ画像を用意し、opacityのテクスチャに設定すればこの通り。

…が、初心者にとってはそのままサラッと表示してくれる「Redshift」はありがたいですね。

マテリアルの変換について(2019年12月12日加筆修正)

「Octane」「Redshift」「Cycles4D」には専用マテリアルに変換する機能があります。

・Octaneのマテリアル変更方法
OctaneのLive vierwer「Materials」→Convert Materials

・Redshiftのマテリアル変換方法
Cinema4DのUI上部の「Redshift」→Materials→Tools→Convert All Materials
※Convert&Replace All Materialsを選ぶと、自動的にマテリアルの置き換えもしてくれます。

・Cycles4Dのマテリアル変換方法
Cinema4DのUI上部の「Cycles4D」→Convert Materials

「Octane」には他にも、SmartRig(落合信人)様「Octane Roundtrips2」という無償のスクリプトを制作、提供してくれています。
このスクリプトは標準マテリアル→Octaneマテリアル→標準マテリアルと、ボタン一つで変換したり戻したり出来ます。
DLは→こちら

■インストール方法
AppData\Roaming\MAXON\Maxon Cinema 4D RXX\library\scripts
の方に解凍(展開)したフォルダごといれましょう。試したところ、R21でも使用できました

・「OctaneRoundtrips2」を用いたOctaneのマテリアル変換方法
R21の場合…Cinema4DのUI上部の「機能拡張」→ユーザースクリプト→OctaneRoundtrips2→OctaneRoundtrips2

R20の場合…Cinema4DのUI上部の「スクリプト」→ユーザースクリプト→OctaneRoundtrips2→OctaneRoundtrips2

さて、
「これらの変換機能を使えば、全てのマテリアルが最適な形に変換されるのか?」
と聞かれればそれは無理です。例えばsketch&toonなど特殊なマテリアルは非対応ですし、
基本的には変換後、ある程度は自分で調整が必要になるかなと思います。

また、個人的な見解ですが
マテリアル変換を使う場合には、どのレンダラーもリアルタイムプレビュー画面を一度閉じた方が良いと思います。
そうしないと、マテリアルマネージャに並ぶマテリアルが上手く反映されない場合があるからです。

OctaneのToon表現について

「Octane」はToonが扱えますが、印象的には標準レンダラーで使える「フレネル」に近いです。

X-particlesで炎や煙のレンダリングをする

「Cycles4D」だけは「x-particles」の「xpExplosia」(炎や煙)をそのままレンダリングする事が出来ます。
「Octane」「Redshift」はキャッシュ(OpenVDB)を作ってからでないと表示できません。

ノイズ除去について

ノイズの除去を語るには勉強不足かもしれませんが、多少触れておこうと思います。

※この動画は、大きな画面で見ないと差が分からないと思います。
「屋根の下の白い壁」や「屋根の影になっている部分」に注目するとノイズの減り具合が分かりやすいです。

動画は全て「Redshift」でレンダリングしたものですが、
「Octane」にも「Cycles4D」にもデノイザーはついていますし、
Cinema4D R21にはレンダリングの「特殊効果」の欄にも「ノイズ除去」という項目があり、
チェックを入れるだけで効果を発揮してくれます。
今回は「Redshift」のデノイザーとR21のノイズ除去機能、AfterEffectsプラグインの「NeatVideo」を使って比べてみました。
(※NeatVideoて何?という方は→こちら

①ノイズ除去なしで書き出したもの
②ノイズ除去なしで書き出したもの+NeatVideo
③ノイズ除去して書き出したもの
④ノイズ除去して書き出したもの+NeatVideo

当然、C4D側とAfterEffectsで2回ノイズ除去を施した④が一番綺麗なのですが、それだけレンダリング時間もかかっています

①はRedshiftのレンダリングに10
③はRedshiftのレンダリングに25分

もちろん、
ノイズ除去の過程で細かなディテールが失われたりもするので、
キレイな映像を作るには手間と知識と時間がかかるのだなあ〜ぐらいに理解して貰えたらと思います。

CGクリエイターは、お客さんに
「カメラ位置を変えてみて」「ボールの色変えてみて」「バックを海にしてみて」
…など気軽に言われると、その都度レンダリングとノイズ除去に時間がかかってしまうわけですね(汗)

さあ、どれを選ぶ?

「一生一つしか使えない呪いをかけるぞ!」
と言われたら「Redshift」でしょうか。

「Octane」の使い勝手と雰囲気のあるレンダリング結果は大好きなのですが、
レンダリングの速さと安定感を重視したいからです。
物理シミュレーション時の動きが「Octane」並みであれば最高なのですが。

「Redshift」は2018年、2019年と2月に20%OFFセールをしているので
2020年にもセールがあれば是非買いたいです。

また、Cinema4D R21をこれから購入したい!
という方は、サブスクリプション版には「Redshift」がバンドルされている商品もあるので、
検討してみてはいかがでしょうか?→こちら

その他の有名な外部レンダラー

U-render

リアルタイムプレビューが最終出力並みに美しいという特徴があり、
まるでゲームエンジンのUnityやUnrealEngine4の様です。

ちなみに前述した3種のレンダラーのリアルタイムプレビューは
全て「ノイズまみれの状態から、徐々にクリアになっていく形(パストレーシング)」なので、
視認性も速度もU-renderにはアドバンテージがあると言えます。
価格も安価で、セール時には25000円程。素晴らしい!

ではなぜ、自分が比較候補に入れてないかと言えば、
1.パーティクルが使えない。(x-particlesを使えないのは個人的に辛い)
2.揃えて来た外部レンダラー用のプラグインが使えない。
という2点からです。

※他の外部レンダラー同様、U-renderも専用のマテリアルを使う必要があります。
※マテリアル変換機能は実装されています。

とはいえ、U-renderには将来メインレンダラーになりえる可能性を感じています。
安価な今のうちにライセンスを購入しておくのも手かなあ…と思っています。

■入手先(海外本家)…https://u-render.com/
■入手先(国内代理店)…https://shop.tmsmedia.co.jp/products/detail.php?product_id=1273
■価格…約3~4万円

Arnold Render

「sketch&toon」の様に線画やトゥーン表現が可能なレンダラー。

これだけで大変な魅力なのですが、お値段が…。
約9万円の年払いサブスクリプションのみなので、C4D本体より高い!?
…という事で、候補から外しました(汗)

■入手先(海外本家)…https://u-render.com/
■入手先(国内代理店)…https://gogo3d.borndigital.jp/products/list.php?category_id=426
■価格…約7~10万円(サブスクリプション1年)

まとめ

思いの他、長文の記事となってしまいました(汗)
同じように外部レンダラーの導入を検討している方の参考となれれば幸いです!

映像、イラスト、漫画、コンテなどの制作、画像加工を承っております!→こちら

Cinema4Dの外部レンダラーを比較してみる。” に対して1件のコメントがあります。

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